チェアパーソンのマリー・バレント女史の、リメイクで無難に儲けたい方針から、すでにダーレン・アロノフスキー監督による「ロボコップ」のリメイク(厳密にはリメイクではなく、続編で、その後の話が描かれる)をスタートしているMGMが、同社が権利を持つ、1982年製作の人気ホラー映画「ポルターガイスト」のリメイクもスタートし、脚本を「ブギーマン」(2005年)のコンビ、ジュリエット・スノードンとスタイルズ・ホワイトに依頼したことを明かしました。「ポルターガイスト」は、ご存知のように、スティーヴン・スピルバーグ監督が自らのオリジナル・ストーリーをプロデューサーとして映画化したもので、墓地だった土地に建てた家に住んだせいで、一家の幼い娘が悪霊にとり憑かれるというお話です。この「ポルターガイスト」は、当時、スピルバーグが自分で監督したかったのですが、同時に監督していた「E.T.」(1982年)をほぼ完成させながらも仕上げきっていなかった為、映画監督組合で定められた規約“同時に2本の映画を監督してはいけない”に縛られ、監督として現場に入ることができませんでした。そこでスピルバーグは、「悪魔のいけにえ」(1974年/「テキサス・チェーンソー」のオリジナル)でカルト人気を誇っていたホラー映画監督トビー・フーパーを雇い入れ、スピルバーグ自身は立場をプロデューサーとしながらも、子どもの演出が要となる前半の家族の物語の部分は、ほとんど自分で監督し、後半のホラー描写の演出だけをトビー・フーパーに任せたという、規約破りが問題視された逸話が残っている作品です。このスピルバーグが映画監督組合から除名されかけた問題について、当時のインタビューで、「監督として現場にいながら、単にお飾りで、別の者が演出してるのは苦痛ではなかったか?!」などと聞かれたトビー・フーパー監督は、「低予算ホラー映画の世界では、あり得ないギャラの監督料をもらったからね。自分の映画はその金で作るよ」と、共犯者だけに遠まわしながら、サバサバと答えていますが、自分の任された後半のホラー場面を強烈にエスカレートさせて描いたのは、あえて前半のスピルバーグの演出との間に落差をつけることで、無言の抵抗を示したものだと評されています。リメイクでは、そんな特殊な事情が絡むはずもないことから、映画の内容を二転三転させず、整合性を持たせると思いますが、テレビから悪霊が出てくるというアイディアは、「リング」シリーズでも再利用され、使い古されているので、どのように現代的にアダプテーションするのか?!が楽しみですね。脚本を任されたジュリエット・スノードンとスタイルズ・ホワイトは、マイケル・ベイ監督のホラー映画再生業者みたいなプロダクション、プラチナム・デューンズから、ヒッチコック監督の名作「鳥」(1963年)のリメイク版の脚本も依頼され、執筆中であるのに加え、ココで紹介したニコラス・ケイジの大予言スリラー「ノウイング」もコンビの脚本です。ただし、この「ノウイング」は、先月末のサンディエゴ・コミック・コンで予告編と映画の一部を上映した際、失笑が沸き起こり、スリラーとして、まともに受け取ってもらえませんでした。恐らくは、ニコラス・ケイジが広いおでこに汗して、必死の形相の芝居が、もはやセルフ・パロディにしか観えないからかな?!と思うのですが、「ノウイング」のスタッフは、2009年3月のアメリカ公開に向け、内容の見直しに追われているはずです。最後に、「ポルターガイスト」と言えば、シリーズ3作品で主人公の少女キャロル・アンを演じた子役のヘザー・オルーク(↑写真)が、わずか12歳で夭折してしまうなど、他にも出演者が亡くなり、呪われた映画と囁かれていますが、リメイクではそういったことがないように願います…。