アメリカ映画の歴史を変えるトラック運ちゃんとは、レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットの「タイタニック」(1997年)で、史上空前の歴代興行記録ダントツ首位の6億ドルを米国内で稼ぎだしたジェームズ・キャメロン監督のこと。ご覧いただくのは、そのジェームズ・キャメロン監督が、30年前の1978年に初めて作ったSF短編「ゼノジェネシス」(Xenogenesis=異種創生、※オクテイヴィア・E・バトラーの同名SF小説と内容も若干、似てるが、この映画の方が先)です。ジェームズ・キャメロン監督は、30年前の当時、トラックの運転手をしていましたが、映画監督への夢を捨てがたく、トラックを降りて、この本格的なSF映画「ゼノジェネシス」の自主製作にとりかかりました。1978年と言えば、その前年1977年に…、 →
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公開された「スター・ウォーズ」が爆発的な大ヒットとなり、SF映画は儲かる!!といった風潮が当時ありました。それでトラック運ちゃんのジェームズ・キャメロンもSF映画バブルに乗っかり、節税がてら、あわよくば儲かれば…と下心を持った歯科医のグループから、まずは2万ドル(約190万円、30年前はもっと価値ありますね)を出資してもらって、ご覧の12分間の短編のデモを作り上げました。しかし、「スター・ウォーズ」のスペース・オペラを期待していた歯医者たちは、どんくさいロボット・バトルの本作にガッカリし、「ゼノジェネシス」の企画から撤退してしまいます。この「ゼノジェネシス」が中途半端なところで終わっているのは、そういう理由です。それで、ジェームズ・キャメロンの映画監督デビューの夢は一旦、終わってしまうのですが、B級映画の帝王ロジャー・コーマンがこのデモ・フィルムを気に入り、「殺人魚フライングキラー」(1982年)を監督するチャンスを与え、まわり道はしましたが、映画監督ジェームズ・キャメロンはこの世に誕生できた訳です。未完の「ゼノジェネシス」の内容は、機械にひとの出生までコントロールされた未来で、人間本来の種の存続のあり方を取り戻そうとするカップルの物語ですが、機械による支配という未来感は後の「ターミネーター」シリーズに引き継がれ、ロボット・バトルは「エイリアン2」(1986年)に発展したというのは、映画ファンの方なら、すぐに察せられますね。作家性は処女作に表れるなどとよく言われますが、ジェームズ・キャメロン監督も例外ではないようです。無名のど素人ジェームズ・キャメロンに協力し、主演した男優のウィリアム・ウィッシャーは、この後、「ターミネーター」シリーズにも出演し、「2」(1991年)ではジェームズ・キャメロン監督と共同で脚本を書き上げることになります。また、「アビス」(1989年)にも友情出演しました。最近では、「ダイハード4.0」(2007年)のプロデューサーとしてもウィリアム・ウィッシャーは活躍しています。ジェームズ・キャメロン監督は、約1年先ですが、「タイタニック」以来となる約11年ぶりの監督作のSF超々大作「アバター」が2009年12月に全米公開になります。その「アバター」にも、この「ゼノジェネシス」の名残りを見つけることが出来るか?、そんな映画を読み解いていくオモシロさがひとつ増えればいいなと思い、トラック運ちゃんが未完成で涙を飲んだSF映画のカケラをご覧いただきました。ココに、「アバター」に登場するエイリアンのコンセプト・アートがあります。
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