原案を担当している現「バットマン」シリーズの最新作「ダークナイト」が今夏、歴史的大ヒットとなり、時の人として注目を集め続けている脚本家デヴィッド・ゴイヤー(写真)の最新監督作品「アンボーン」が初公開したポスターです。ビショ濡れになりながら、悲鳴を上げている美女は、謎のモンスターに追われたかと思えば、お次は謎の幽霊に悩まされている、「クローバーフィールド」(2008年)のオデット・ユーストマンです。本作は2週間前に、ココで予告編を紹介しましたが、オデット・ユーストマン演じるヒロイン、ケイシーの一緒に生まれてこれずに死んだ双子の片割れが、怨霊となって彼女にとり憑き、復活をはかろうとするのを、ゲイリー・オールドマンのエクソシストが退治しようとしますが、怨霊の背後には、さらに恐ろしい存在がいた…ッ!!みたいなお話です。その「アンボーン」の撮影現場を訪問した、ホラー映画の専門サイト Bloody Disgusting.Com のインタビューに応じたデヴィッド・ゴイヤーは、過去20年間のホラー映画を振り返り、ロクな作品がなく、ホラー・ジャンルは不作だったと苦言を呈しています。そういった中で、デヴィッド・ゴイヤーは自分が本当に怖いと思ったホラー映画として、以下の4本を上げました。 →
「ジェイコブズ・ラダー」(1990年/エイドリアン・ライン監督)
「ザ・リング」(2002年/ゴア・ヴァービンスキー監督)
「プロフェシー」(2002年/マーク・ペリントン監督)
「エミリー・ローズ」(2005年/スコット・デリクソン監督)
デヴィッド・ゴイヤーは以上のホラー映画について、恐ろしい出来事が現実に起きているかのようにリアルに描いた点が優れていたと述べており、映画としての格も備わっていたとしています。上記4本のうち、「ザ・リング」はご存知のように、そもそもは日本のホラー映画のリメイクですから、少し横に置いておくとするならば、残りの3本は、確かにそれぞれ良くできた映画で、日本のマニアにも認められていますが、一般にはウケずにヒットしなかった作品ばかり…。デヴィッド・ゴイヤーの“現実に起きているようにリアルに描く方がよい”という映画作法は、まさに「バットマン/ダークナイト」に取り入れられたそのものであり、世界中で大ヒットの引き金となった重要なポイントです。けれど、その「ダークナイト」はオタク大国であるはずの日本では、大してウケず、ブームにまで至りませんでした。日本ではなぜ、「ダークナイト」が流行らないのか?!、海外のメディアでニュースにさえなるほどでしたが、デヴィッド・ゴイヤーが「ダークナイト」の下敷きにしていたと思われる作品が、日本ではコケた映画ばかりだった…というのは、そういった疑問に答えを求める分析の中で、貴重なヒントになるかもしれません。また同時に、次回作の続篇「バットマン3」の行方を占う指標ともなりそうです。デヴィッド・ゴイヤーは先の4本の他に、「ディセント」(2005年/ニール・マーシャル監督)、「THE JUON/呪怨」(2004年/清水崇監督)の2作品も、恐ろしい場面や描写が際立っていた作品としてあげていますが、総評的には「ディセント」はB級映画の粋を出ず、「THE JUON/呪怨」はダメ映画だと斬り捨てられています。ところが、先のリンクから、この「アンボーン」の予告編をご覧いただくと、明らかに「THE JUON/呪怨」の清水崇監督の演出をパクッている様子が窺えるので、デヴィッド・ゴイヤー自身のホラー映画も、本人の言葉とは裏腹に、理想とする領域には達せられていないのかもしれません。まぁ、「アンボーン」はプロデューサーがマイケル・ベイですから、ホラー映画の焼き直しは得意ですし、描写もリアルさで背筋を凍らせるよりかは、ドカンッと派手に手に汗握る流れへと方向づけられても無理はありません。しかし、デヴィッド・ゴイヤーの理想からハズレてるとなれば、それは日本人にはおもしろい、ウケそうな映画だと言うことですよね?!、そんな、とりあえず楽しめること間違いなさそうな「アンボーン」は2009年1月9日から全米公開です。
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