スパイク・ジョーンズがベストセラー絵本を映画化した話題作「かいじゅうたちのいるところ」の新しい予告編と、映画秘宝に掲載した原稿!!

かいじゅうたちのいるところ-1
先月7月末開催のサンディエゴ・コミック・コンでも人気を集めたスパイク・ジョーンズ監督の最新作のファンタジー映画「かいじゅうたちのいるところ」の第2弾となる新しい予告編を、製作・配給のワーナー・ブラザースがリリースしました…ッ!!
予告編を観れば、愛嬌たっぷりのかいじゅうたちを好きにならずにはいられませんが、実は最初からそのようにかいじゅうたちが愛された訳ではなかった…という本作のたどった経緯を、映画秘宝の求めに応じてまとめ、今年2009年6月号(4月21日発行)で発表した原稿を、この機会にあげておきます。予告編とあわせてお楽しみください…ッ!! → 


かいじゅうたちのいるところ-6
事の起こりは2007年末にカリフォルニアのパサデナで約400名の一般モニターを集めて行ったテスト試写で、子どもが泣き出し、親子連れが映画の途中で帰り始めてしまったことだった。ホラー映画ならよかったのだけれど、上映されたのは絵本作家のモーリス・センダックが1963年に発表以来、世界中の子どもたちから愛されてきたロングセラー「かいじゅうたちのいるところ」を映画化したものだったから、子どもが怖がってしまってはどうしようもない…。
ファミリー映画としてヒットを見込み、7,500万ドルもの多額予算をつぎ込んだ製作のワーナー.ブラザース幹部は頭を抱え込んでしまったが、作った張本人の監督は「僕は4歳児向けの映画を作るつもりはないと言っておいたはずだけど…」と飄々としていた。そのふざけた監督こそは「マルコヴィッチの穴」(1999年)や、「アダプテーション」(2002年)といった、観客をブラックジョークみたいな異次元に迷い込ませる奇天烈な作品や、下品なイタズラ連発で顰蹙の「ジャッカス」シリーズの仕掛け人スパイク・ジョーンズだったから、ファミリー映画を作らせようとした映画会社の方がカン違いとしか思えない。
けれど、「かいじゅうたちのいるところ」の映画化は原作者センダックとスパイク・ジョーンズ監督が90年代半ばから共に進めてきた企画で、同監督は真剣によいものを作ろうと、「お利口な子役が演じるシラジラしい子どもらしさで観客を欺いた子ども騙しの演出ではなく、子どもの姿をありのままに描こうと思った…」のだが、それが受け入れられず、「かいじゅうたちのいるところ」は2008年10月の公開をキャンセルされ、オクラ入りとなってしまった…。
http://www.traileraddict.com/emd/10921
↑ スパイク・ジョーンズ監督が自ら、かいじゅうに扮して、小さな子どもの反応を窺ってみたテスト・ビデオ。子どもはやっぱり、嫌がっています…。
…というのが、今年3月に海外で予告編が公開されるや、大反響を巻き起こし、2009年№1映画の候補といった絶賛の前評判を勝ち取ったファンタジー映画「かいじゅうたちのいるところ」が世に踏み出した第1歩だった。
一度、失敗の烙印を押された映画がまさに180度も評価を転換できたのは不思議に思われるだろう。が、その理由のひとつには2007年末に上映されたのが、SFX未処理でワイヤーアクションのワイヤーも丸見えどころか、かいじゅうの声を担当する声優が映画の途中で変わるといった、あり得ない状態の本当に初期の試行錯誤の仮編集でしかなかったことがある。
本来は外部に観せるべきでない段階でテスト試写にかけたことがトラブルを招いた感だが、ワーナーとしてはピクサーのジョン・ラセター監督がアニメ化がふさわしいと考え、サンプル・アニメまで作った原作を、スパイク・ジョーンズ監督が実写で、しかも、あえて今時、古風な着ぐるみでかいじゅうを表現したセンスが信じきれず、ともかく観客の反応を知りたいと焦ったのだろう。
「かいじゅうたちのいるところ」のかいじゅうとは、シングルマザーのお母さんが恋人を作ったことで複雑な気持ちになり、お母さんとケンカしてしまった主人公の9歳の少年マックスが現実逃避し、空想の中で出会うクリーチャーたちのことだ。
スパイク・ジョーンズ監督は「自分が子どもだとして、モンスターを想像するのにアニメの絵でイメージするかい?、自分と同じように現実の世界にいるものとして思い浮かべるだろう」と、心象風景の“リアル”を表現するために、実写で着ぐるみという選択を選んだと語っている。また、「かいじゅうたちはマックスを慰める存在であると同時に、彼の不安を象徴しているので、少し怖くなければならない…」とも説明している。
かいじゅうたちのいるところ-2
しかし、どんなに意味を込めても、観客が拒否反応を示せば、商業映画としては頂けない。ワーナーは過去にポール・シュレイダー監督が登場人物の心理を深く追求して作った「エクソシスト・ビギニング」(2004年)をお釈迦にし、レニー・ハーリン監督にイチから同じ映画を娯楽作として作り直させるといったことまでした映画会社なので、「かいじゅうたちのいるところ」も同じことをされるのでは?とのウワサが、年が明けた2008年初めからハリウッドで広がってしまった。
ところが、思いがけずワーナーは「この映画のトラブルは“問題”ではなく、“チャレンジ”と考えたい…」と前向きな姿勢を表し、公開を2009年10月に1年先送りの発表を行い、「スパイク・ジョーンズ監督の作家性を尊重し、お互いが共通の着地点を見出していく」ことを目指して、手直しのための追加出資を決めた。そして、スパイク・ジョーンズ監督は2008年6月から「かいじゅうたちのいるところ」の製作を再開し、追加撮影を経て同年秋には編集を完成させ、SFXの仕上げで着ぐるみの顔にCGで豊かな表情を与え、愛嬌のあるかいじゅうたちを誕生させた。
スパイク・ジョーンズ監督を信頼し、原作を託したモーリス・センダックは、「誰にも迎合せず、君の想いを素直に映す個人映画にすればいい」と言ってくれていた。スパイク・ジョーンズ監督は出来上がった「かいじゅうたちのいるところ」を、「子どもについての映画ではなく、観る人自身が子どもの気持ちになれる映画を作った」と述べている…。予告編で使われているアーケイド・ファイアの曲は、2007年の否定されたバージョンでも使われていた。スパイク・ジョーンズ監督には映画の完成形はとっくに見えていたに違いない。
かいじゅうたちのいるところの新しい予告編!!
http://www.traileraddict.com/emd/13075
スパイク・ジョーンズ監督がガキ向けのぬるい家族映画の型にハマることなく、新しい映画のヴィジョンを示した、大人も楽しめる必見の最新作「かいじゅうたちのいるところ」は、10月16日から全米拡大ロードショー!!、日本では来年2010年1月封切りの予定です…ッ!!、ワーナー・ブラザースがまたペプシ・コーラとタイアップして、かいじゅうたちの小っちゃい BE@RBRICK のおまけを作ってくれることを、ひそかに期待しています…ッ!!
かいじゅうたちのいるところ-5
【注意】本文の二重使用・無断転載厳禁。引用は当ブログ名を明記し、リンクをお願いします。特に某映画サイトのライターは文章を丸々コピーしないこと!!

広告