誰も死なない2092年の未来で、ただひとり死んでいこうとする120歳の老人の心模様を描いた詩的なSF「ミスター・ノーバディ」の予告編!!

ミスター・ノーバディ-1
カンヌ映画祭新人監督賞にあたるカメラ・ドールに選ばれた「トト・ザ・ヒーロー」(1991年)や、ダウン症の青年の旅を描いた「八日目」(1996年)で独自の映像世界を築いてきたベルギージャコ・ヴァン・ドルマル監督が、世界のマーケットを視野に置き、初めて英語で作った大作です…!!→ 


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妻と3人の子どもたちに囲まれ、平凡な生活を送っていたはずの34歳のニモは、目覚めるとプールの中にいて、120歳の老人になっていた…ッ!!
…という不思議な出だしから始まる、ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の最新作「ミスター・ノーバディ」は、もはや、死が存在せず、人間は誰も死ななくなった2092年の未来に突然、120歳でたどり着いてしまい、世界でただひとり、死の宿命を背負った珍しい人間として観察される主人公のニモが、自分の人生は、果たして、本当に歩むべき正しい人生を選んできたのか?!、自らの人生の様々な岐路での選択を老衰の死の床で振り返る…といった内容です。
そうした人生の分かれ道で、もし、あの時、こうだったなら…とは、誰でも想像してみるものですが、残念ながら、現実はいつもただひとつで、それはどんなに願っても変わりようがありません。しかし、この映画では、ニモの振り返る過去は多岐に渡り、ニモを演じて主演した俳優のジャレッド・レトによれば、彼は12通りのニモの人生を映画の中で生きているそうです。そうしたニモの多数の人生の物語が映画の中で交錯することにより、年老いたニモにも、どれが自分の本当の人生だったのか?!、わからなくなることに…。
ジャコ・ヴァン・ドルマル監督は、冒頭に記したデビュー作の「トト・ザ・ヒーロー」でも、自分は赤ん坊の時に取り違えられ、本当の親ではなく、他人の家で育ってしまった…と信じている老人トトを主人公にして、トトが振り返る自らの誤まった人生と、本来のあるべき幸福な人生のイメージがモザイクのように入り組み、現実と虚構が境い目をなくしていくスタイルを採用していました。
ミスター・ノーバディ-4
そうしたジャコ・ヴァン・ドルマル監督の作風は、心理学で使われる言葉から文学表現を指す用語に転じた“意識の流れ”を映画に取り入れたものだと一般に評されています。
“意識の流れ”とは、人の意識=心は個別の概念が秩序を持って、順番に並んだ静的なものではなく、常にとりとめなく変化し、全体が移ろっていく動的な流れだ…といったような考え方です。
そのように意識が常に変化するのであれば、意識がつなぎとめている記憶も形を変える訳であって、現実の事実はどうあれ、過去の心の真実は幾通りにもあり得るだろう…というのが、ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の映画の世界観だと考えられている訳です。
そうした“意識の流れ”に似た考えに基づく作品としては、アンドレイ・タルコフスキー監督の「」(1974年)が代表作としてあげられますが、公開当時、断片的な映像の羅列の意味がわからないとされた同映画について、最も明快なレビューを発表したのは、黒澤明監督でした。黒澤明監督は「断片的な場面の印象だけが次々と浮かび、なぜ、その光景を覚えているのかもわからない子どもの時の記憶を忠実に映画化した作品」といったように評し、「鏡」を絶賛しています。
少し話が横道にそれましたが、ジャコ・ヴァン・ドルマル監督がこの「ミスター・ノーバディ」=“誰でもない人”で観せてくれる何通りもの人生から、最終的にどんな、ひとつの意味を見出すことができるのか?!、すごく楽しみな作品ですし、また、本格SFのテイストも感じられるところが、興味深い映画のように思われます。
ミスター・ノーバディ-5
本作に主演したジャレッド・レト(↓)は、「チャプター27」(2007年)でジョン・レノンを殺したマーク・チャップマンを演じていた人ですが、天才ダーレン・アロノフスキー監督の傑作「レクイエム・フォー・ドリーム」(2000年)でも、素晴らしい演技を披露していました。共演者として、主人ニモの初恋の女性を演じているのは、クエンティン・タランティーノ監督の最新作の戦争映画「イングロリアス・バスターズ」(8月全米公開)に出演したドイツの女優ダイアン・クルーガー(↓)です。
ダイアン・クルーガーは、この「ミスター・ノーバディ」について、“自分がこれまでに受け取った脚本の中で最も感銘を受けた物語”と、シナリオを執筆したジャコ・ヴァン・ドルマル監督に最高の賛辞を贈っていますが、そのベストの評価をタランティーノ監督の「イングロリアス・バスターズ」は更新できたのか?!、ダイアン・クルーガーに質問にぶつけてみたいと思うのは、ちょっとイジワルでしょうか?!
ちなみにダイアン・クルーガーによれば、アメリカ資本を導入した「ミスター・ノーバディ」の製作費は5,000万ドル超だそうで、“ヨーロッパ映画としては破格の大作なのよ…!!”とのことで、世界中でヒットさせたい意思を示しています。
ミスター・ノーバディ-3
そして、ニモと不幸せな結婚をし、家庭不和に陥っている妻を演じてくれたのは、名作「アウェイ・フロム・ハー/君を想う」(2006年)のサラ・ポーリー監督(↓)です。
つまり、ゾンビ映画「ドーン・オブ・ザ・デッド」(2004年)でゾンビを殺しまくっていたサラ・ポーリーです。と言うか、この場合は紹介している作品の質にあわせ、感動的な名作「死ぬまでにしたい10のこと」(2003年)、「あなたになら言える秘密のこと」(2005年)のサラ・ポーリー…と書くのが暗黙のルールですね。
ミスター・ノーバディ-2
ジャコ・ヴァン・ドルマル監督が本格的に世界に打って出る最新作「ミスター・ノーバディ」は、本国のベルギーでは今秋10月から公開の予定ですが、北米での封切りは今のところ、未定です。けれど、日本ではアスミック・エースの配給で来年
2010年にロードショー公開されることが決まっています。よかったですねッ!!
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