*数字は、週末の興行成績-(公開館数)-トータル成績 の順です。
第1位 第2位
第3位
第4位
第5位
第1位「13日の金曜日」(公開中)
$42,245,000-(3,105館)-$42,245,000
第2位「そんな彼なら捨てちゃえば」
$19,610,000-(3,175館)-$55,078,000
第3位「テイクン」
$19,250,000-(3,109館)-$77,925,000
第4位「お買いもの中毒な私!」(5月30日公開)
$15,406,000-(2,507館)-$15,406,000
第5位「コラライン」
$15,323,000-(2,320館)-$35,585,000
第6位 第7位
第8位
第9位
第10位
第6位「ポール・ブラート/モール・コップ」
$11,700,000-(2,965館)-$110,515,000
第7位「ザ・バンク/堕ちた巨像」(4月4日公開)
$10,000,000-(2,364館)-$10,000,000
第8位「ピンクパンサー2」(4月11日公開)
$9,000,000-(3,245館)-$22,321,000
第9位「スラムドッグ$ミリオネア」(4月公開)
$7,150,000-(1,634館)-$86,546,000
第10位「PUSH/プッシュ」
$6,931,000-(2,313館)-$19,325,000
★各映画の解説はこちらです。→
★先週から息を吹き返してきた全米映画興行ですが、アメリカでは週明けの月曜日が“大統領の日”という祝日にあたり、この週末はお休みが1日多いロング・ウィークエンドなので、ホリデイ気分に後押しされ、さらに勢いを盛り返した映画館は、先週(6日~8日)と比較して、全体で約28%の売り上げアップの傾向を示しています。
この大統領の日を含むロング・ウィークエンドの連休興行の全体売り上げとしては、2007年に記録された約1億6,780万ドルが過去最高額ですが、今年はすでに日曜日の段階で約1億6,800万ドルを超える金額が報告され、早くも売り上げ新記録を達成しています!!
興行アナリストらの予想ではおよそ2億ドル近い、約1億9,500万ドルを今年2009年は、この大統領の日連休で稼ぎ出すだろうとのことで、アメリカは本当に未曾有の大不況に見舞われているのか?!と、連日の経済ニュースを疑いたくなるような好況に映画界は沸き立っています。
ハリウッドにとっては、まさにバレンタイン・デーのギフトをもらったかのようなハッピーな連休ですが、その裏事情としては、世の中の多くの人たちが手近で済ませられる映画で連休のレジャーを済まし、節約と現実逃避をしているのか?!といった見方もできることから、社会全体を見渡せば、少し複雑な心境にもなります。
★13日の金曜日という不吉な日から始まった大統領の日連休の興行で首位に当選した大統領は、13日の金曜日から日本を含む世界の主要な国々で一斉に公開された「13日の金曜日」でした!!
この最新作の「13日の金曜日」は、すでにご存知のように、ショーン・S・カニンガム監督が1980年にスタートさせたスラッシャー・シリーズ「13日の金曜日」をリメイクしたもので、オリジナル・シリーズは、「エルム街の悪夢」シリーズのフレディと共演した2003年の「フレディVSジェイソン」まで含めれば、23年間の間に計11本の作品が作られています。平均すると、およそ2年少しの間にコンスタントにシリーズが1本ずつ作られ続けたことになり、あらためて「13日の金曜日」が驚異的に息の長い超人気シリーズだったことがわかります。
そんな「13日の金曜日」の最新作は、ご覧のように日曜日の段階で約4,224万ドルも売り上げ、連休はまだ、アメリカでは明日となる月曜日の祝日も残っていることから、4日間のロング・ウィークエンドを通しての最終的な興行成績の予想は、5,200万ドル前後に達するだろうと見込まれています。
過去の大統領の日連休の興行記録の歴代第1位はニコラス・ケイジの「ゴーストライダー」が2007年に記録した約5,200万ドルですから、この「13日の金曜日」が入れ替わりに、大統領の日連休の歴代興行記録トップの座を奪うことになりそうで、いかに本作が大ヒットしているかが、ご理解いただけると思います。
オリジナルの1980年の「13日の金曜日」のオープニング成績は約580万ドルだったのですが、当時とは時代も違いすぎますし、過去のシリーズと新作はちょっと比べがたいので、リメイクを行った、常に火薬の匂いがするマイケル・ベイ監督のホラー映画専門仕立て直し業者プラチナム・デューンズの他のホラー・リメイク作品と比較してみた場合、最新作の「13日の金曜日」は、同社が看板を上げた第1作めにして最大ヒット作の「テキサス・チェーンソー」(2003年)のオープニング記録約2,800万ドルを軽く抜いて、プラチナム・デューンズ史上においても最高の売り上げを記録しています。
その「テキサス・チェーンソー」の最終的な興行記録は約8,057万ドルだったので、公開3日めでその半分をすでに稼いでしまった「13日の金曜日」が、さらに記録を更新し、同社の代表作の座を完全に奪うことは、もはや必至の勢いです。
また、視点を変えれば、その「テキサス・チェーンソー」と、この新装「13日の金曜日」は同じマーカス・二スペル監督の作品ですから、マーカス・ニスペル監督にとっても自己ベスト更新のチャンスが巡ってきたことになります。
さらに加えて、このリメイク版「13日の金曜日」が8,000万ドルを超えるヒット作となっていった場合、「13日の金曜日」シリーズ史上の最高ヒット作「フレディVSジェイソン」の興行記録8,262万ドルにも手がかかることになり、本家本元の「13日の金曜日」史上でも歴代最高のヒット作になりそうです。
マイケル“映画は爆発だ!!”ベイ監督のホラー映画専門仕立て直し業者プラチナム・デューンズは、2007年の「ヒッチャー」(オープニング:780万ドル、最終:1,640万ドル)を除けば、ほとんどのリメイク・ホラー映画を興行的に成功させています。同社がこの調子を持続し、今春から撮影を開始する予定の「エルム街の悪夢」のリメイクなども大ヒットさせていくと、いずれ過去の人気のホラー映画はすべてプラチナム・デューンズが自分たちの映画に作り変えてしまいかねません…。
しかし、ホラー映画ファンの方はご承知のように、映画の出来としては、「テキサス・チェーンソー」も、オリジナルのトビー・フーパー監督の「悪魔のいけにえ」(1974年)に遥か遥か遠く及んでいませんから、温故知新として、プラチナム・デューンズ版だけでなく、オリジナルの映画も常にご覧になり、比較してみることをお薦めします。
大ヒット連続殺人記録を更新中のリメイク版「13日の金曜日」の出演者は、テレビ・シリーズ「スーパーナチュラル」の主人公兄弟の成宮寛貴の方を演じていたジャレット・パダレッキ、パパが殺人鬼の「Mr.ブルックス/完璧なる殺人鬼」(2007年)のダニエル・パナベイカー、「The O.C.」のセスのセクシーなおばさん、アマンダ・リゲッティといった顔ぶれです。ホッケーマスクの殺人鬼である新ジェイソンを演じているのはスタントマン兼業俳優のデレク・ミアーズです。
下↓の動画は、本作のメイキングの撮影風景の様子です。
「13日の金曜日」 メイキング・ビデオ
http://www.movieweb.com/v/VIPhlVUTQhTcTY
★ラブコメ女王ドリュー・バリモアが全力プロデュースしたラブコメ群像劇の恋愛バイブル・ムービー「そんな彼なら捨てちゃえば」が、同じ観客層をターゲットにしたラブコメの新作「お買いもの中毒な私!」が封切られたにも関わらず、そんなラブコメなら捨てちゃえばと観客を譲らず、バレンタイン・デーのデート映画対決を征し、先週の初登場第1位から、わずかにワンランクだけダウンの第2位です。
本作の製作費は推定で約2,500万ドルなので、興行収入が元手の倍を超えたことから、製作費はほぼ回収の見込みが立ったことになります。
5,000万ドル台の売り上げは、ドリュー・バリモアのラブコメとしては平均的な最終興行収入の数字なので、早くもノルマを達成した感がありますが、本作はドリュー・バリモア単独主演ではなく、群像劇として、多くのキャストがそれぞれのファンを集め、まだ2週めの第2位ですから、数字はまだまだ順調に積み上げていきそうです。先週からの売り上げのマイナス率は約29%で、ま、普通ですね。
★第3位は、娘を誘拐されたリーアム・ニーソンが「バットマン・ビギンズ」(2006年)のラーズ・アル・グールよりも怖いモンスターペアレントになり、犯人をパリまでブチ殺しに行くリュック・ベッソン製作のサスペンス・アクション「テイクン」ですが、3週めで75館が上映を打ち切ってしまったのにも関わらず、売り上げのマイナスは先週と比べて、わずかに6%という驚きの少なさで、いかに本作が人気を集めているかが読み取れます。リーアム・ニーソンの単独主演作としては、スピルバーグ監督の名作「シンドラーのリスト」(1993年)で記録した約9,606万ドルが最高額ですが、もしかするとリーアム・ニーソンはこの「テイクン」で、思いがけなく自己ベストを更新できてしまうのかもしれません。
★「バッドボーイズ」や、「パイレーツ・オブ・カリビアン」、「ナショナル・トレジャー」といった超ド級のアクション・エンタテインメント大作映画のスーパー・プロデューサーとして知られるジェリー・ブラッカイマーが、なんとラブコメに挑戦?!した「お買いもの中毒な私!」が、期待ハズレの第4位で初登場となり、さしもの豪腕ジェリー・ブラッカイマーも、ことラブコメにおいては、女王ドリュー・バリモアには歯が立たない…という、おもしろい笑える結果が出てしまいました!!
この「お買いもの中毒な私!」は…と言うか、「レベッカのお買いもの日記」といった方がわかりやすいと思うのですが、ソフィー・キンセラこと元金融ジャーナリストのメラニー・ウィックハムが2000年から出版している同名の、いわゆる“チック・リット”の代表的大ベストセラー・シリーズを映画化した作品です。
“チック・リット”とは、20~30代の都会で働く独身女性が興味や関心のある内容を詰め込んだ売れ筋狙いの軽い小説のことで、スラングで“オネーちゃん”を意味する“チック”と、文学の“literature”を省略した“リット”を合わせた造語です。
そんな女性にウケる要素だけを詰め込んだ小説を映画化した作品が、今ひとつ支持されなかったのは、大恐慌以来の危機的な不況で景気がどん底に落ち込み、多くの人が将来の生活に深刻な不安を抱える中、お買いもの中毒な私だって?!、バーローッ!!、勝手に中毒になって借金抱えてろッ!!ということですね。多くのメディアが、本作の紹介にあたっては必ずと言っていいほど、そうした皮肉をチクリとひと言つけ加え、現在公開するのにふさわしい映画とは思わない…と指摘しています。
そんなちょっと世の中の現実から浮きまくってしまった「レベッカのお買いもの日記」の内容は、邦訳本を出版するヴィレッジブックスの紹介によれば…
レベッカは、金融情報誌『サクセスフル・セイヴィング』の新人ジャーナリスト(いちおうね)。かしこいお金の使いかたについて記事を書くのが、日々のお仕事。にもかかわらず…彼女のあらゆる悩みを一瞬にして忘れさせる大好きな趣味は、なんと「お買いもの」!うまくいかない転職活動、つづかない恋愛、貯まらないお金―すべてを忘れるために、「いけない、いけない」と思いながらも、ふくらんでいくのはカード返済額と言い訳の数ばかり。そんなレベッカの唯一心なごむひとときは…なんといってもやっぱり「お買いもの」!世界中の女性の圧倒的な共感を呼んだ、ロンドン発NY経由のベストセラー小説。
…とのことで、早い話が「ブリジット・ジョーンズの日記」が「セックス・アンド・ザ・シティ」をやっているといったところでしょうか?!
主人公のレベッカを演じているのは、「ウェディング・クラッシャーズ」(2005年)や、「ルックアウト/見張り」(2007年)で注目されたアイラ・フィッシャーですが、彼女が一番有名なのは、あの「ボラット」(2006年)のトンデモなく悪ノリのコメディアン、サシャ・バロン・コーエンの嫁さんだということです。
女優としては、特に華やカリスマ性があるわけでもないアイラ・フィッシャーを主役に起用したキャスティングも観客にピンとこさせるアピール度が足りなかったように思われます。
共演者として、レベッカの恋のお相手となるのは、「いつか眠りにつく前に」(2007年)のヒュー・ダンシーです。私生活では同映画の主演女優クレア・デインズの婚約者という羨ましいバカ野郎ですね。
レベッカの親友スージーを演じてるクリステン・リッターは、「ヴェロニカ・マーズ」や、「ギルモア・ガールズ」といった人気ドラマに出演し、それなりに有名ですが、映画では「ベガスの恋に勝つルール」(2008年)や、「幸せになるための27のドレス」(2008年)など、本作と似たような都会派のラブコメに端役で顔を出す程度だったので、やっと目立つポジションを獲得できました。
娘をアホな浪費家に育てた親の顔が見たいよ!!と言われてしまう両親は、ジョン・グッドマンとジョーン・キューザックです。また、2008年のフランス映画「I’ve Loved You So Long」での演技が大絶賛につぐ大絶賛で、ゴールデングローブ賞にもノミネートされたクリスティン・スコット・トーマスも出演しています。
監督は1994年のオーストラリア映画の傑作「ミュリエルの結婚」が世界的に大評判となり、ジュリア・ロバーツの「ベスト・フレンズ・ウェディング」(1997年)でハリウッド進出したP・J・ホーガンです。
この「お買いもの中毒な私!」を製作したのは、ディズニー傘下のタッチストーン・ピクチャーズですが、同社は来年からスピルバーグ監督のドリームワークス作品を配給できることになり、ラインナップの幅が広がるので、ジェリー・ブラッカイマーも、もう無理にラブコメを作らなくてもよくなるかもしれません?!、で、そのジェリー・ブラッカイマーによれば、この「お買いもの中毒な私!」の半ばで観られるタイムズ・スクエアのシーンで、背景の屋外看板のビルボードが、彼のプロデュース作品である来年2010年夏公開のジェイク・ギレンホール主演のエキゾチック・アドベンチャー大作「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」(同名ゲームの映画化)の広告になっているそうです。という訳で、先週、ネタふりした映画の中で初公開される新作映画のポスターの答えはそれでした。ちなみに、動物戦隊映画「Gフォース」のポスターも一緒に写っているそうですが、そっちのガキ映画に興味のある層は「お買いもの中毒な私!」をまず絶対に観ないと思います。
しかし、理由があるんでしょうけれど、映画の邦題にすでに浸透している原作のタイトル「レベッカのお買いもの日記」を使わないのは、よく理解できません。「買いもの中毒」という言葉を題名として使うのは少し無神経で不快な印象を与えたり、反感を呼びかねないので、「お買いもの日記」が無難なところでしょう。
「レベッカのお買い物日記」 予告編
http://www.movieweb.com/v/VIMQYNQVplcHRO
★第5位は、ダコタ・ファニングが主人公の声を担当し、世界で初めて、レンズが2つあるデュアル・デジタルカメラで撮影された、本当の3-D映像によるヘンリー・セリック監督のストップモーション・アニメ「コラライン」です。
先週の初登場第2位から、新作2本に上乗りされ、第5位に転落してしまいましたが、さらに21館が上映をスタートし、売り上げのマイナスは1割に満たない9%と、人気を持続しています。
先週、レポートしたように、この「コラライン」を製作したアニメ・プロダクションのライカは第1回作品の本作を作っただけで休業に追い込まれていますが、本作はあらゆる面で評価が大変、高く、最終的な興行収入の予想は大体、6,000万ドル前後ではないか?!と見込まれています。
「コラライン」の製作費は推定で約7,000万ドルから1億ドルの間と計られており、6,000万ドルでは興行では黒字には達しませんが、そこまでいけば後はDVDなどの二次市場や、フィギュアや関連商品の売り上げなどを含め、採算がどうにか黒字ベースに乗る可能性が高いとして、ライカの業務再開に希望の光が差しつつあります。一時解雇されているアニメーターの人たちが早く無事に第2回作品の製作に本格着手できればよいのですが…。
ところで、ヘンリー・セリック監督が本作の宣伝プロモーションとして、 CINECON のインタビューに応じ、明かしたところによれば、ディズニーは同監督の代表作「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」(1993年)の続編をストップモーションではなく、CGアニメとして製作するプランを考えていたそうです。
その件を告げられたヘンリー・セリック監督がディズニーの人間に、なぜ、ストップモーションではダメなのか?!と尋ねたところ、ストップモーション・アニメは時代の流れの中で過去の遺物として生き残れそうにない…と答えられたそうで、ヘンリー・セリック監督は大変、ショックを受けたそうです。しかし、そんな愚か者の考えを、「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」の原案クリエイターであり、プロデューサーのティム・バートン監督が認めるわけもなく、そのプランは実現にまで至りませんでした。
そのディズニーの誰かさんは、この「コラライン」の素晴らしすぎるストップモーション・アニメを観客が大いに楽しんでいる大成功を目の当たりにしても、なおまだ、ストップモーション・アニメは過去の遺物だと言い切れるのでしょうか?!
コララインが、元の普通の世界に帰らせてくれないパラレル・ワールドの
お母さんに口応えする場面
http://media.mtvnservices.com/mgid:uma:video:mtv.com:335896
★ホンモノの警察官になれなかったドジでダメなデブの警備員のポールが、ついに1億ドル以上を稼ぎ出すミラクル・ヒットを達成してしまいました!!
今週第6位に着けているケヴィン・ジェームズ主演のコメディ映画「ポール・ブラート/モール・コップ」は、先週の第5位からワンランク・ダウンし、公開5週めで204館がデブにサヨナラを告げてしまいましたが、なんと売り上げは反比例で、プラス約7.5%を示し、連休のホリデイには強いファミリー映画の底力を発揮しました!!、トータルの売り上げも、まさか?!まさか?!と言われた大台の1億ドルを突破し、1億1千万ドルを超えてしまいました!!
この「ポール・ブラート/モール・コップ」のあり得ないはずの大ヒットで、主演を張れるマネーメイキング・スターのコメディ俳優としてひとり立ちできたケヴィン・ジェームズは、早くも次の主演作として動物園の飼育係を演じるコメディ映画「ズー・キーパー」(The Zookeeper)が決定しています。
この「ズー・キーパー」の物語は、恋人ができないケヴィン・ジェームズが、その理由を自分がデブだからではなく、毎日、動物の相手ばかりで女性と出会う機会がないからだと考え、転職を志しますが、なんと動物たちがそんな彼を引きとめようとする…といった内容です。
「ポール・ブラート」の続編製作がほぼ決定的となり、冗談半分で世間から、次の警備先は動物園あたりじゃねぇのか?!などと、次回作は「ポール・ブラート/ズー・コップ」だ!!と揶揄されていたケヴィン・ジェームズですが、職種こそ違うものの、“善良ないい人”を演じられる次の舞台として、大方の予想通りに動物園を選んでしまったのは、あまりにも平凡すぎる、ひねりのない企画の選択だったと言うしかありません。
「ズー・キーパー」の監督をつとめる予定のフランク・コラチは、「ポール・ブラート」のプロデューサーであるコメディアン、アダム・サンドラーの地位を決定づけることになった出世作の2本の映画=名作「ウォーターボーイ」(1998年)と、ドリュー・バリモアが共演したラブコメの大々傑作「ウェディング・シンガー」(1998年)を作った人です。なので、ケヴィン・ジェームズの新作は相変わらずアダム・サンドラーがらみの人脈で作られるわけですが、フランク・コラチ監督の近年の仕事は、ジャッキー・チェン主演の大コケした「80デイズ」(2004年)や、アダム・サンドラーが主演したことにより大ヒットはしたものの、内容的には今ひとつ?!、ふたつ?!だった「もしも昨日が選べたら」(2006年)など、過去の映画とは比べ物にならないほど精彩を欠いてしまっています。
「ズー・キーパー」はその物語性からして、CGの動物たちとケヴィン・ジェームズとの愉快な共演だよん!!というベタな仕上がりが予想されるので、エディ・マーフィの「ドクター・ドリトル」シリーズみたいなロクでもないファミリー映画が出来上がりそうです。しかし、その参考作品となる「ドクター・ドリトル」シリーズは2作品とも、とんでもなく大ヒットしていますし、人気の動物映画として「ズー・キーパー」も興行的にはまず成功しそうなので、ケヴィン・ジェームズはマネーメイキング・スターの地位を揺ぎないものにするでしょうが、まっとうな映画ファンからは見向きされなくなりそうです。
★大不況で中小の民間企業がバタバタと倒産を余儀なくされ、個人が失業で路頭に迷う中、経営に失敗をしても政府からの莫大な公的資金援助で手厚く保護されてしまう大手銀行のトップが恥知らずにも高給のボーナスを受け取っていやがるぞ!!といったニュースに眉間に皺を寄せた人も多いと思います。結局、アメリカの大手銀行のトップはボーナスを返上し、公けの場で謝罪をさせられましたが、そんな今や庶民の敵?!、現代の悪の巣窟?!とも言える銀行を悪者に据えたアイディアは、まさにタイムリーな企画だったのですが、ハナから黒いとわかっているクソ野郎どもの腹の内など、今さら観たくもねぇよ!!と思った人が多かったのか?!、クライヴ・オーウェンが国際金融機関の不正を暴き、闘いを挑むアクション・サスペンス「ザ・バンク/堕ちた巨像」が、自分たちこそ倒産してしまいかねない低調な第7位からのスタートとなってしまいました…。
この「ザ・バンク/堕ちた巨像」は、最初に公開した予告編に、ニコラス・ケイジの「ゴーストライダー」から爆破カットを再利用して使ったことで、いきなり、ドアホッ!!の評価を下されたバカ宣伝で有名になった作品です。
内容は、国際的な金融機関のメガバンクが単なる銀行ではなく、市場をコントロールするため、要人を暗殺して政治を動かす陰謀を練ったり、マネー・ロンダリングで犯罪組織にも加担するほか、兵器売買のビジネスで儲けるため戦争まで企てているといった、実は世界の舵取りを闇の裏側で行っていることを、銭形のとっつぁんも所属するインターポールの捜査官であるクライヴ・オーウェンのとっつぁんが暴き、その巨悪を倒そうとする金融をからめたサスペンスです。
クライヴ・オーウェン捜査官の協力者となるニューヨークの地方検事エレノアを演じているのは、「ザ・バンク」と同様に“ザ”で始まる4文字題名の「ザ・リング」(2002年)のナオミ・ワッツです。しかし、国際的な陰謀に立ち向かうのに“地方”検事というのは、何でやねんッ?!と笑ってしまうギャグのように聞こえますね。
脚本の段階で、誰もツッコミを入れなかったんでしょうか?!
監督は、途中までは最高におもしろいのに、クライマックスとオチがトンデモない展開で開いた口がふさがらなくなる「パフューム/ある人殺しの物語」(2006)のトム・ティクヴァです。トム・ティクヴァ監督の作品の中では、この「ザ・バンク」が最もフツーの映画のような感じがしますが、それは反面、トム・ティクヴァ監督らしい個性があまり「ザ・バンク」では発揮されていなさそうだとも言えるわけで、トム・ティクヴァ監督のファンには本作は少し物足りないのかもしれません。
この「ザ・バンク/堕ちた巨像」の世界が失笑した「ゴーストライダー」をフィーチャーしたバカ予告編はコチラです。
下↓の動画は、映画の冒頭5分間丸ごとです。ただならぬ陰謀の前兆として、クライヴ・オーウェンの同僚の捜査官が暗殺されてしまいます。路上で絶命した同僚と同じポーズでクライヴ・オーウェンが倒れ込んでしまう演出は、事件に深入りすると、彼にもやがて同じ死の運命が訪れるであろう可能性を暗示し、これから始まる映画への期待を膨らませていますね。
さらに下↓の動画は、約6分半と少し長いのですが、本作の大きな見どころである、ニューヨークのグッゲンハイム美術館での銃撃戦シーンのために、極めて精巧な同美術館のセットが約10週間もかけて造られた様子を紹介しています。
伝説的な建築家であるフランク・ロイド・ライトが設計したグッゲンハイム美術館は、世界で最も美しく、かつ世界で最も有名な美術館として、建物自体が“作品”と化しています。
そのフランク・ロイド・ライトのグッゲンハイム美術館を完璧に再現するというのは、映画のセット美術としては大きな挑戦だったと言えます。普段あまり注目されることの少ない映画の裏方のセット作りですが、ふ~ん、こうして出来ていくんだ…と眺めてもらえればと思います。そうして苦労して長い時間をかけ、ようやく、すごいセットが完成したかと思えば、次は途端に自分たちでそれを破壊し始めるというのが、映画作りの醍醐味で、美学ですね。
積み木やブロックを積み上げた子どもが、自ら怪獣となって、それを破壊してブッ壊して遊ぶのに少し似ています。映画の楽しさの秘密はそこら辺りにあると、僕はいつも思っています。
「ザ・バンク/堕ちた巨像」 映画冒頭5分間
http://www.movieweb.com/v/VIze1zzCJLiwDz
グッゲンハイム美術館を作る…、そして、バンバン撃ち合いをする!!
http://media2.firstshowing.net/firstshowing/flv-embed/flvplayer.swf
★第8位は、先週初登場第2位だったスティーヴ・マーティン主演の、誰も望んでいないのに勝手にカン違いしてシリーズ化してしまった第2弾「ピンクパンサー2」ですが、誰も望んでいないので当然、フリーフォールの急降下ですね。
スティーヴ・マーティンは、とにかく、くだらない映画と本作が徹底的に評論家からコキおろされていることについて、「そもそもイロモノのお笑いはまともに批評されないから仕方がない…」などと弁解していますが、だったら、なぜ、なぜ、お客さんは来ないのでしょう?!、イロモノのお笑いなのだとしたら、理屈っぽい評論家からは嫌われても、お客さんからは支持されなければダメなのでは?!、結局、カン違いしてることに何の変わりもありません。
本作のアベレージの売り上げは約2,773ドルなので、本来ならBEST10には入ってこれない数字ですが、それを公開館数の多さでカバーし、ランキングに食いこんでいます。そうしたことがカン違いにつながっていくんでしょうか?!
★第9位は、いよいよ今週末の日曜日(22日)に迫った第81回アカデミー賞でも作品賞・監督賞をダブル受賞し、今年度の映画賞を総なめにしてしまうのか?!と、大きな関心が寄せられているダニー・ボイル監督の感動映画「スラムドッグ・ミリオネア」です。
本作は公開14週め(!)にして、ついに映画館の数が減少傾向に入り、90館が公開を終了しましたが、売り上げのマイナスはなんと、たったの0.4%!!、要するにスクリーンを減らされても、何の影響もなかったわけですね!!、この映画を観たい!!、観なければ!!、観るんだ!!、観ろ!!と思っている人が、まだまだ相当な数がいるということで、ロングランは延々と続いていきそうですが、製作費わずか1,500万ドルの小品が、気づくともう、8,654万ドル以上も稼いでしまっています…!!
★先週初登場第6位という、ヘボいスタートを切り、「コラライン」とのダコタ・ファニング対決で敗れてしまったダコタ・ファニングのサイキック・バトルアクション・ムービー「PUSH/プッシュ」が、題名に反して観客からのプッシュはもらえず、早くも第10位でランキングから消え失せようとしています。
本作の製作費は約3,800万ドルですが、興行が赤字で終わるのは言うに及ばないことから、今後の2次利用や海外マーケットの売り上げで何とか製作費を取り返すしかありません…。しかし、今のところ、アメリカ以外での海外での売り上げもわずかに28万ドル程度です。超能力者たちの闘いはこれ1本で終わりを告げそうですね。
★さて、今週の圏外の注目作ですが、昨2008年10月にミュージシャンへの転向を表明し、俳優を廃業したホアキン・フェニックスの最後の映画となる引退作品のラブストーリー「トゥー・ラバーズ」が、たった7館の限定公開で封切られましたが、完全に観客から無視されてしまったようで、興行ランキングでは相当に下の方にいるらしく、データが上がってきません…。
この「トゥー・ラバーズ」が完全に無視されている事情は後で説明しますが、映画自体は胸の痛くなる恋愛映画の秀作として良い評価を受けています。
ホアキン・フェニックス引退作品「トゥー・ラバーズ」は、他の作家だったら中編と言っても、おかしくないのだろうけれど、書いたのが軒並み長い小説で知られるロシアの文豪ドストエフスキーだけに短編になってしまう、恋愛小説の「白夜」が下敷きになっています。
その「白夜」の舞台をニューヨークのブルックリンに置き換え、自伝的な要素を込めた脚本を自ら書き、監督をつとめたのは、ホアキン・フェニックスとこれまでにも「裏切り者」(2000年)、「アンダーカヴァー」(2007年)などを一緒に作ってきた名コンビのジェームズ・グレイ監督です。
インディーズ映画の名匠として知られるジェームズ・グレイ監督の過去の作品は一見、サスペンス映画に見えながら、その核は人間ドラマだったので、新作の題材にドストエフスキーといったロシア文学が登場してきたことは、それほど驚きには値しません。
で、本作の内容はと言うと、婚約者との間である問題が発生し、破談となり心に深い傷を負ったホアキン・フェニックス演じる主人公のレオナルドが人生に疲れ、ブルックリンの両親の実家に戻ってきたところ、両親は彼を慰めようと、サンドラという素敵な女性を紹介してくれます。
しかし、実はサンドラは、レオナルドの両親が経営するクリーニング業に出資し、買収することを考えている金持ちの娘で、両親は単にレオナルドの幸せだけではなく、将来のビジネスの安定までを考えて、言わば、レオナルドに政略結婚をすることを望んでいるのでした。
そんな両親の敷いたレールにしっくり来ないレオナルドは、軍需産業大手のスターク・インダストリーで社長秘書をやっているグウィネス・パルトローが演じる美しいご近所さんのミッチェルと出逢います。
ミッチェルとは友人関係のはずのレオナルドでしたが、ミッチェルが勤める法律事務所の妻帯者の上司と不倫していたり、薬物に頼っているなど、彼女のプライベートな問題を知るにつけ、むしろ、そういうモロさを抱えたミッチェルの危ういところに、レオナルドは魅かれ虜となってしまいます…。果たして、正反対の女性の間で、再び心を引き裂かれようとするレオナルドは…。
…といったもので、世の中の野郎は、気軽に親しくしてくれる女性や、何となく頼ってくるような雰囲気の女性に対し、あッ、俺に気があるぞ…?!とすぐに脈アリとカン違いしがちですが、女たちはもっと現実的に考えていますよ…といったことが、ひとつのテーマになっているようです。ドストエフスキーだけでなく、ヒッチコック監督の悪女映画「めまい」(1958年)なども、ジェームズ・グレイ監督は参考にしたのでは?と評されています。
逆タマの金持ち娘サンドラを演じているのは、「ヒルズ・ハブ・アイズ」(2006年)で知られるヴィネッサ・ショウ。ホアキン・フェニックスの母ちゃんを演じた大御所イザベラ・ロッセリーニの存在感が高く評価されています。
さて、本作が無視される理由ですが、まず、この項目の冒頭でもふれたように、俳優をやめ、ミュージシャンになることを宣言したホアキン・フェニックスが原因です。ホアキン・フェニックスのミュージシャン転向については、彼の妹のサマー・フェニックスのダンナとして義理の弟となるケイシー・アフレック(「ゴーン・ベイビー・ゴーン」2007年)が、義兄の人生の一大転換点を追ったドキュメンタリー映画を作り始めたことから、ホアキン・フェニックスがミュージシャンに転向するというのは世間を欺く大ウソで、実はそういう内容のフィクションのやらせドキュメンタリー=モッキュメンタリー映画を作ることが目的のパフォーマンス・プロジェクトではないか?!とのウワサが先ごろから飛び交うようになりました。が、しかし一応、それはデマで、ホアキン・フェニックスは今後はミュージシャンとしてしか活動しないと、彼のエージェントがあらためて公式に発表しています。
そんな訳で、もう俳優としての仕事は一切、したくないのか?!、ホアキン・フェニックスはこの新作「トゥー・ラバーズ」の宣伝プロモーションのために出演した、デヴィッド・レターマン司会のCBSテレビの人気トーク番組「レイト・ショー」で、トーク番組に出ながらトークをしない…ッ?!という、とんでもない態度をとってしまいました…。
ホアキン・フェニックスの問題の「レイト・ショー」
そのホアキン・フェニックスが出演した「レイト・ショー」の様子が、上↑の動画ですが、ヒゲもじゃのサングラスで、もう誰なんだかわからないような風貌で登場したホアキン・フェニックスは、終始、うつむき加減の姿勢で、トークを盛り上げようとネタをふり努力するデヴィッド・レターマンに対し、その都度、肩透かしを食らわすように、「知らない…わからない…」ばっかりを連発しています。
そうした司会者を無視するような態度の極めつけとして、デヴィッド・レターマンから「共演者の名前は何だっけ?」と、映画の話題をふられたホアキン・フェニックスは、ただコーヒーをガブリと飲んだだけで答えず、自分でネタをふったデヴィッド・レターマンが自分で「グゥイネス・パルトローだよ」と答えてしまい、ホアキン・フェニックスは「あぁ、そうだ…」と、共演者の名前など、もう忘れてしまった…といったフリをしています。
アメリカを代表するトーク番組の「レイト・ショー」だけに、グゥイネス・パルトローも恐らくこの場面を観たのでは?!と想像するのですが、グゥイネスはどう思ったんでしょう…??また、さらにホアキン・フェニックスの態度が輪をかけてひどかったのは、デヴィッド・レターマンがホアキン・フェニックスがずっと番組中にガムを噛んでいることをチクリと指摘すると、ホアキン・フェニックスはそれは悪かったとばかりに口からガムを取り出して、なんとデヴィッド・レターマンの司会者のデスクの裏にガムを貼り付けてしまいましたッ!!
結局、映画「トゥー・ラバーズ」について、ホアキン・フェニックスは「その映画は観ていないから、自分は何もわからない」というポーズを貫き(確かに彼は自分の映画を観ないことで有名なのですが…)、映画の紹介は一切、しませんでした…。
デヴィッド・レターマンはトークショーのホストとしては、あるまじき言葉でしょうが、最後に「ホアキン、あんたが今日、ここに来れなかったらよかったよ」と、ガツンときついジョークまで発しています。
ホアキン・フェニックスがなぜ、こんな態度をとったのか?!、その心中は本人以外はわかりません。もしかすると、インディーズ映画で、宣伝費などないに等しい「トゥー・ラバーズ」に注目を集めようと、マスコミが飛びつく奇妙な言動を、わざと演じてみせたといった解釈もできるでしょう。
しかし、そのあまりに司会のデヴィッド・レターマンや視聴者を小バカにした、ふてぶてしすぎる不愉快な態度は世間の集中砲火を集めただけで、これまでホアキン・フェニックスを応援し、彼の俳優復帰を望んでいたファンも、もう、あんた、このまま消えてくれていいよ!!と、大勢が宗旨変えをしてしまいました…。
なので、そんなムカつくホアキン・フェニックスの引退作品「トゥー・ラバーズ」を、わざわざお金を払って観ようという観客がいるわけもなく、映画は見事に無視されているわけですね…。
ミュージシャンとして披露したラップもまるで評価されておらず、ホアキン・フェニックスは完全に終わった…と言われていますが、一体、彼に何があったのか?!、名優ホアキン・フェニックスが本当にこのまま世の中から消えていくとしたら残念なかぎりです…。
きっと天国にいる、さよならのキスもできなかったインディ・ジョーンズ=リバー・フェニックスもさびしく思っているに違いありません。
「トゥー・ラバーズ」 予告編
http://www.movieweb.com/v/VIftFjijvoYOjf
★今週末の全米公開作品は、アメフト部員の男子高校生コンビがチアリーダーの合宿に参加し、男2人に女300人というウハウハ状態になるマイナーなエッチ系青春コメディ「ファイアード・アップ!」と、タイラー・ペリー製作・タイラー・ペリー脚本・タイラー・ペリー監督・タイラー・ペリー女装で主演?!の、とにかく、自分の名前をアピールしなければ気がすまない唯我独尊なタイラー・ペリーのどうせおもしろくないに決まっている「タイラー・ペリーのマディア・ゴース・トゥ・ジェイル」という、ロクでもなさそうな2本だけ。先ほどチラとふれたように、今週末の日曜日(日本では月曜日)はアメリカ映画界最大のイベント、アカデミー賞授賞式があるので、映画の話題やニュースはそちらで持ちきりとなってしまうことから、このタイミングでいい映画を封切っても注目されず損だ…ということですね。なので、あまり次週のランキングに動きは期待できなさそうですが、そのぶんオスカーの行方をお楽しみにッ!!
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