先日、ココでお伝えした、スティーヴン・スピルバーグ監督の度を越した監修のもとで、ホラー映画のカルト監督トビー・フーパーが作った、1982年の傑作ホラー「ポルターガイスト」のリメイクの企画ですが、監督の第1候補として、ヴァディム・パールマンが、映画を製作するMGMと詰めの話し合いに入ったというニュースが飛び出し、驚きを集めています。驚きを集める理由は、ウクライナ出身のヴァディム・パールマン監督が、オスカー3部門にノミネートされた、2003年のデビュー作の文芸映画「砂と霧の家」も然り、2作めの最新作「ライフ・ビフォー・ハー・アイズ(The Life Before Her Eyes)」(2008年/海外公開済)でも、優れた構成で、人間の深い葛藤を描くドラマ映画の名匠だからです。そんなヴァディム・パールマン監督をホラー映画のリメイクに起用しようというセンスは、かなり変わっていますが、MGMは、すでにスタートした「ロボコップ」のリメイク(内容的には続編)を、やはり、「レクイエム・フォー・ドリーム」(2000年)などのアート系映画の監督ダーレン・アロノフスキーに託しています。その方針に沿えば、ヴァディム・パールマン監督で「ポルターガイスト」というのも、うなづけますが、ヴァディム・パールマン監督は過去に、「自分の心に語りかけてくるテーマのない映画は作らない」と、自分の映画作りへのポリシーを述べており、いったい、トビー・フーパーの映画から、どんなことが心に語りかけてきたものか?!、ヴァディム・パールマン監督の「ポルターガイスト」への見方など、今後の発言が注目されます。ヴァディム・パールマン監督の「砂と霧の家」は、このブログで引用する時は必ず、「必見」や「絶対にお薦め」、「とにかく観ろ!!」とイチ押しをつけることにしている名作で、主演はベン・キングズレーとジェニファー・コネリー。家の売買をめぐり、誰も悪い人じゃないのに、事態が良くない方にばかり転がっていく、世の中の現実の矛盾に逆らえない人の心の葛藤を描いた良質なドラマです。日本未公開の「ライフ・ビフォー・ハー・アイズ」は、マイケル・ムーア監督が「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002年)で取り上げた、コロンバイン高校の銃乱射をモデルとする事件で生き残った女性が、払拭できずに抱え続ける罪悪感のジレンマを、ユマ・サーマンが見事に演じきった傑作。と、こうして並べてみると、卓越した演出力で、前者では“家”を象徴的に浮き彫りにすることに成功し、後者は死と罪のイメージにまとわりつかれる苦悩のゴースト・ストーリーとも言えることを合わせると、「ポルターガイスト」にならなくもないのですが…、もしかして、MGMのプロデューサーも、こんな風にヴァディム・パールマン監督を口説いた?!、いずれにしろ、MGMは、才能的には第1級の名監督を持ってくることで、それぞれのリメイク映画を、単にヒーロー・アクションや、ホラーとは呼べない作品に仕上げたいのでしょうか?!、MGMの賭けが吉と出るのか?!、凶なのか?!、今後の続報にご期待ください!!、そんな訳で、ついでに「ライフ・ビフォー・ハー・アイズ」の予告編を観てください。必見ですよ。
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